森の中の映画館。

不定期に映画の感想記事を投稿します。

映画、Xエックスの続編【Pearlパール】告白シーンは魂の懺悔…(※ネタバレあり)

【Pearlパール】

2022年∣アメリカ∣ホラー∣102分

『出演』

ミア・ゴス

デヴィッド・コレンスウェット

ダンディ・ライト

マシュー・サンダーランド

エマ・ジェンキンス=プーロ

『監督』

タイ・ウエスト

『脚本』

タイ・ウエスト

ミア・ゴス



映画【Xエックス】に登場したあの老婆の若かりし頃を描いた続編です。(ご想像のあの老婆です)
因みに完結編の【MaXXXincマキシーン】とあわせ3部作となっております。

この作品自体は続編とは言っても前作の知識は必要無く、一つの映画としてちゃんと完結しているので、前作の【Xエックス】を見ていなくても問題なく楽しめる作りになっています。

因みにこの3部作は主演ミア・ゴスのための映画とも言われているそうで、少女のような雰囲気もあり何処か蠱惑的な魅力もある、ミア・ゴスが前作同様今作も主演を努めております。

私は吹き替えで見たのですが、言葉の表現が字幕とは違う部分があるようです。(特に後半のパールの告白部分の表現が字幕の方が突っ込んだ表現及び、ミア・ゴスが持っているものが凄すぎるので是非見るなら字幕をオススメいたします)


感想


ストーリー。

1918年のアメリカ・テキサス。
華やかなスクリーンで踊るスターに憧れる主人公パール(ミア・ゴス)。

パールは敬虔で厳しい母親と病気で体が不自由な父親と人里離れた田舎の農場で暮らしていて、いつか農場を出てスターになることを夢見ています。

パールには夫のハワードがいますが戦争に出兵中です。(夫の実家は金持ち)
ドイツ系移民のパール達家族は肩身が狭い上、世界的にはスペイン風邪が大流行していて生活も苦しく厳しい。(母親も厳しい)


パールの生活は父親の世話と農場の家畜達の世話の繰り返し、閉塞的で鬱屈とした毎日を送る中、自分の好きな映画スターの名前をつけた家畜達を相手に、ミュージカルショーの真似事をする時だけが束の間の幸せ。


ある日父親の薬を買いに町へと出掛け、薬を買った代金のあまりを手に、母に内緒で楽しみにしていた映画をみたバールは、スクリーンの中で踊るダンサー達を憧れの目で見つめるのでした。

映画館を出たパールはそこで(いかにも女性慣れしてそうなハンサム)映写技師に出会います。


彼に特別に親切にされ自分の夢を語るパールに、まるで女性を口説き慣れているような口ぶりで、自分の夢を肯定されるパール。(映写技師が余程タイプじゃないと思う女性以外は、心を掴まれるんじゃないかと思います。因みに私はちょっと掴まれかけました) 


さらに親を残し農場を出ることが出来ないと話すパールに、自分の人生なのだから…と優しく背中を押され、いつでもこの部屋のドアをノックしてくれて良いから…とまで言ってくれます。(下心無しでこの親切心ならまさに真の紳士)


真の紳士なのか…果たしてその親切心は下心ありのただの女性好きな男なのか…この女性慣れしてそうなハンサム映写技師との出会いは、パールの自由への渇望・秘めた夢を一層大きなものにしていくのでした。


街からの帰り道、導かれるように畑の中に入っていくパールは、そこにあったカカシと恍惚の表情でダンスを踊り出します。(ストレス溜まってるんでしょうね…その気持ち分かります)


一瞬カカシの顔があの男性の顔(想像してください、そう頭に浮かんだあのハンサムです)に見えてしまい、ハッ!と我にかえりますが、妄想が爆発したパールはカカシと性行為の真似事を始めてしまいます。(安心してください、家族でみるには気まずいシーンですがギリギリ大丈夫です!)


農場に帰ると案の定母親に、薬の代金の残りはどうしたと聞かれますが、飴を買って食べたと誤魔化すパールに、母親は飴を食べたならご飯は要らないだろうとパールの料理を取り上げてしまいます。(飴だけじゃお腹の足しにならないのに…)


そんな抑圧された生活の中で、ある日夫ハワードの妹ミッツィーから、色々な都市を巡回公演する、ダンスチームのオーディションが街で開催されると聞き、夢への執念が燃え上がるパールはミッツィーとともにオーディションを受けることにします。(田舎街にこんなチャンスが巡ってくるなんて、滅多にないだろうし)


オーディションを前に気持ちが高ぶるパールは、夜家を抜け出し映写技師に会いに行きます。


映写技師はフランスで購入した秘蔵の映画を見せてくれますが、その映画はなんとポルノ映画でした。(フランスと聞いてエマニュエル夫人が頭を過ぎる)


まだアメリカにはポルノ映画が解禁されていない時代、初めてみたポルノ映画に合法なのかと戸惑うパールに、映写技師は時代が動くにつれ、いずれこういう映画が求められ、そして広く世に出てくるだろうと言う様なことを話します。(実際その通りになってますね)


映写技師に自由への救いを見出し始めるパール、この時点でパールの自由を渇望する気持ちが、かなり高まっているのが感じ取れます。(恐らくこのまま進めば危険な位に)


しかし映画館に行ったことが母親にバレてしまいます。
気持ちが限界に達したパールはついに母親にオーディションを受けることを打ち明けます。
母親のような人生は送りたくないと感情をぶちまけるパールと、同じく感情を爆発させぶちまける母親は激しい口論になります。


このシーンは今までパール以上に夫の世話や農場の仕事等、ずっと長い間自分の感情をころし、抑圧された生活を送ってきた母親の感情が爆発するので、かなり激しいシーンです。(お母さんも辛かった)


大激怒した母親と激しい口論の末、意図せず母親を暖炉の火の方へ押し付けてしまい、母親は火だるまになってしまいます。
何とか消火することができましたが、母親は瀕死状態です。(消火方法にちょっと笑ってしまいました)


その様子を父親は恐怖の目で見ていました。(気持ちわかるよ…このシーン夢に出てきそう…)


タガが外れてパールの中の狂気が覚醒したように、瀕死の母親と介護が必要な父親を放置してパールは映写技師の元へ向かい、一夜を共にしてしまいます。(やっぱり。フラグは十分立ってました)


翌日、映写技師に家まで送ってもらい、彼に家を案内してまわるパールに、映写技師は徐々に異変を感じ始めます。


濁しながら帰ろうとする映写技師にパールの態度は豹変していきます。
激しい執着心をぶつけ、映写技師を追い詰めるパールに、怯える映写技師。(わかります、一刻も早くこの場を立ち去りたいその気持ち)


パールは帰ろうとする映写技師を農具で〇害します。(とうとうやりました)


パールは怯えた目で自分を見る父親も〇害します。(介護が必要な父親を、一人家に残しては行けないというパールの優しさなのか、間違ってるけど)
そして身支度を整え、オーディション会場へと向かうのです。


先に会場で待っていたミッツィーはパールの荷物を見てどうしたのか尋ねます。(旅行行くみたいだもんね)パールは巡業に必要な荷物を持ってきたと答え、並々ならぬ自信をのぞかせます。(オーディションに受かるのは一人だけ)

ついにパールの順番がまわってきます。


自分の全てを出し切り、今までで一番上手く踊れたと自信満々でしたが、オーディションでは審査員が求めていたイメージとは懸け離れていたため結果は不合格。
絶望のあまり泣き叫ぶパールの姿は、夢が破れ、夢に取りつかれた彼女の狂気が解き放たれたように、激しくも切ない痛々しさを感じたシーンでした。


会場の外で泣き叫ぶパールに優しく声をかけてくれたミッツィーは、パールを家まで送ってくれます。


落ち込むパールに、彼女を元気づけようと、自分をハワードだと思って気持ちを話して欲しい(台詞違ったかもだけどこんなニュアンスの事を言っていた)と優しく声をかけるミッツィー。(優しくて可愛い、好き)


胸に秘めていた思いをミッツィーに打ち明け始めるパール…(※このパールの告白は吹き替えと字幕の表現が若干違います。この告白は是非字幕版の映画を見ていただきたいです)



ハワードを愛していることや、自分を自由にしてくれると思っていたのにそれをしてくれなかったこと…彼女の悩みや苦しみ…

この告白はパールという一人の女性が、ここまでに至る道のりをまざまざと見せつけられます。


あまりにも重い…目を逸らさずしっかりと見て欲しいシーンですが、ミッツィーにはパールの気持ちを受け止めるには重すぎました。


このパールの告白は心からの懺悔…いや、魂の懺悔だと思います。


漸く話し終わったパールはミッツィーに誰にも言わないでと釘をさします。
恐怖に怯えながらもミッツィーはパールを刺激しないよう作り笑顔で誰にも言わないと約束します。(誰にも言わないと言わざるを得ない…)


立ち去ろうとしたミッツィーに「おめでとう」と声をかけるパール。
自分もオーディションを落ちたと誤魔化すミッツィーに、嘘をつかないでと詰めるパール(嘘をつかれると余計に傷付く)、ミッツィーは気まずそうに受かったことを打ち明け、パールの家を後にします。


家を出て帰ろうとするミッツィーは、後ろから斧を手に追いかけてくるパールに切りつけられ、許しを請うのですが、自分の全てを悟ったようなパールに〇されてしまいます。(このミッツィーとの最後の台詞のやり取りは是非映画でご覧いただきたいです。残酷ながら悲しくもパールが自分の立場を受け入れたんだと思いました。)
 

農場の家ではパールが両親の〇体をテーブルに座らせ食卓をセッティング。(本日のメインディッシュは蛆虫のわいた腐った子豚でございます)
母親の死体を綺麗に整えていた様子が切ないです。


異常な食卓の光景…そんな中ついにハワードが戦争から帰って来ます。
呆然と立ち尽くすハワードを前に、パールは必死に笑顔で彼を迎え、最後はそのままパールの何とも言えない、色々な感情が入り混じった笑顔を映したまま映画は幕を閉じます。




感想

一見純朴な田舎の農場の娘って感じのパールですが、常に何処か隠しきれない異常性が滲み出ていて、パールに良い意味での気持ち悪さをずっと感じてました。
主演のミア・ゴスさんの狂気じみたバーサーカーモードの狂気、演技がとても良かったです。


パールはずっと厳しい母親に命令されて、毎日農場の手伝いや父親の介護をしているから、自分の好きなことも夢を追うこともこの農場にいる限り叶いませんでした。


パールの母親も今のパールと同じ…それ以上に大変な思いをして生活してきた事が伺えます。
(夜中一人ベッドで泣いていたり、パールとの火だるま事件の口論の時にもぶちまけてたしかなり葛藤をしていました)


てっきり母親は嫉妬の感情で自分と同じ道をパールに歩ませたいのかと思ったけど、それだけじゃなく、随分前からパールの異常性に気付いていて『この異常者を世に放ってはいけない、一生農場に閉じ込めておかないと大変なことになる』と感じてパールを農場に縛り付けていたことがわかります。(母親のカンは正しかった)またそれがパールを守ることにも繋がると考えていたのだと思います。


母親は『貴方を知れば貴方のことを嫌いになる』と言う様な事をパールに言っていましたが、恐らくパールの本質、異常性の事を指しているのだと思います。
この言葉は呪いのようにパールを苦しめていたのかもしれません。

パールは自分が異常なのかもしれないと気付いていました。(母親にも異常性はあったと思う)
そして恐らくその異常性がとてつもなく大きなものだということも。


パールは自分の異常性に気付いて怯えたりする人間に対してはかなりの敵意を向け、自分を普通の人のように扱ってくれる人や、良い意味で特別に扱ってくれる人に対してはかなりの執着を見せているように見えました。
例えばオーディションの時のミッツィーがパールに言った言葉、「私たち良い友達ね」(親友だったか)の言葉を聞いた瞬間からパールのミッツィーに対しての態度が明らかに軟化していました。


映写技師がパールの家に来た時、パールの異常性に気付き始めた映写技師が帰ろうとした瞬間パールの態度が豹変したことからも推測出来ます。


そして後半のミッツィーをハワードに見立てたパールの告白シーンは是非字幕で見ることをオススメいたします。
吹き替えを見た私でさえ、この告白シーンに引き込まれパールに感情移入して気付いたら涙が溢れていました。
この告白シーンは彼女の心の声、最初で最後の心からの懺悔だと思います。(SOSも含まれていたと思う)


自分の事をちゃんと愛を持って接してくれたハワードはパールにとって特別な存在でした。
『自分は愛されている』と愛を観じることで自分の中にある異常性を抑えていたのだと思います。
『愛される』=憎しみの対象ではない、自分の異常性を表に出さないための必要な栄養分だったのだと思います。


スクリーンの中で踊る煌びやかなダンサーは世界中から愛される存在、そんな愛を一身に集める存在にパールが憧れることは自然なことなのでしょう。


性行為=愛情を確かめる行為だから、愛の経口補水液的な感じで映写技師と関係してしまったのではないか、と私は感じています。


彼女の不幸はハワードが戦争に出兵してパールの元から離れてしまったことです。
特別な愛をパールに注ぐハワードが、ずっとパールの側にいれば彼女はここまで(戻れないところまで)の状態にならなかったのかもしれません。


私は前作の【Xエックス】を視聴済です。、
前作は普通に面白いホラーだったけど、今作はミア・ゴスさんの演技や魅力が際立っていて、イカレてるけど悲しいパールの姿が忘れられません。
前作の老婆パールもこんな悲しみを抱いていたなんて、何かやり切れないです。
とにかくミア・ゴスさんが凄かった、良いホラー映画でした。