
※この画像は生成AIで作ったイメージ画像です。
【TOVE/トーベ】2021年∣フィンランド・スウェーデン∣103分
『出演』
アルマ・ポウスティ
クリスタ・コソネン
シャンティ・ルネイ
ヨハンナ・パールッティ
カイサ・エルンスト
ロベルト・エンケル
『監督』
サイダ・バリルート
最初に、この映画は世界的に有名な【ムーミン】の作者、『トーベ・ヤンソン』の半生を綴った自伝的ドラマです。
そして【TOVE/トーベ】は、劇的な展開がある映画ではありません。(なので退屈に感じる方もいると思います)
トーベという、自由に生きようとした1人の芸術家の物語です。
静かに流れる空気、どこか優しく淡い光の中で生きる人々の姿が心に残ります。
ストーリー
1944年、第二次世界対戦下のフィンランド・ヘルシンキ。
防空壕の中でトーベは『ムーミン』らしき絵を描いていました。(ムーミン誕生です)
彼女の父親は著名な彫刻家で、母親も画家として活躍していました。(芸術家一家ですね)
トーベはムーミンのイラストを描いていますが、父親に否定されてしまいます。
(父親はトーベの才能は認めていても、型にはめようとしている感じがします。国のために評価される作品を作ってきた父親にとって、自由に絵を描くトーベが羨ましかったのかもしれません)
そしてトーベは戦争でボロボロになったアトリエを借り、自分で修理してそこに住み始めます。
あるパーティーに参加したトーベは、そこで政治家で既婚者のアトス・ヴィルタネンという男性に出会い、恋人関係になります。(アトスの奥さんは恋愛に対して奔放な人らしく、自身も浮気していますし、アトスが浮気しても自由だと考えているようです)
トーベはアトスとの関係を続けながらも、絵を描き、芸術家として精力的に活動を続けます。
ある時、市長の娘であるセレブな舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い、彼女にイラストの仕事を依頼されたのが切っ掛けで、惹かれ合った2人は激しい恋に落ちます。(ヴィヴィカも既婚者です)
因みにこの当時のフィンランドでは同性愛は禁じられていたようです。
つまりヴィヴィカとの関係は不倫ということよりも、公には出来ない関係だということになります。
ある日トーベはヴィヴィカとの関係をアトスに打ち明けます。
否定も肯定もしない…アトスとは恋人であるとともに、親友のような、トーベの全てを受け入れて支えてくれる関係のようです。
アトスはトーベの才能を高く評価していますし、さらにお金に困っているトーベのために仕事も依頼してくれます。(既婚者だけど私はアトスの優しさが好きです)
ある時ヴィヴィカはパリに旅立ってしまいます。
一応トーベを誘うのですが、トーベはお金がないと断ります。
そんな折、市のフラスコ画の依頼がトーベに舞い込みます。(どうやらフラスコ画の依頼は…彼女の手引きらしいことが伺えます)
トーベのフラスコ画は素晴らしい出来でしたが、報酬の支払いが遅れています。
そしてヴィヴィカがパリから帰って来ますが、勿論一人ではありませんでした。(彼女の悪い癖が出たようです)
ヴィヴィカ達は、トーベがヴィヴィカの帰国を祝うパーティーに参加します。
そこでトーベは、友人からヴィヴィカの女性関係についてのショックな噂を聞きます。
このパーティーで、ヴィヴィカはムーミンの舞台化をトーベに持ちかけます。
この場では断るトーベでしたが、後に結局舞台化の話を受けることになります。
このヴィヴィカという女性はかなり性に対して奔放…と言うか…気に入った女性を見つけると誰でも口説いて肉体関係を持ってしまう癖?があります。(厄介な癖です…しかも魅力的)
翌日アトスがトーベのアトリエを訪れ、トーベに離婚したことを告げ、そしてプロポーズめいたことを言いますが、返事を濁すトーベに誤魔化すように話をそらすアトス。(ちょっとアトスがかわいそうでした…)
劇場ではムーミンの舞台化に向けて稽古が行われています。
稽古中、ムーミン役の男性が、なぜムーミンはいつも優しいのか、と質問します。
トーベは、彼(ムーミン)は臆病なの……と答えます。(台詞はもう少し続きますが、この続きは是非映画をご覧になって確かめていただきたいです)
稽古最終日の夜…またしてもヴィヴィカの悪い癖が…。(奔放すぎる…)
上演を明日に控えたトーベはアトスと夜の街を歩きます。
そして…今度はトーベの方から求婚するのです。
(アトスは本当に優しいから私もこれは良かったと思いました…でも…)
アトスの家で目覚めるトーベは……やはりヴィヴィカのことが忘れられませんでした。(この時のアトスがかわいそうで…見ているのが辛かったです)
そして劇場ではムーミンの舞台が上演されています。
舞台は大成功、客席には嬉しい人達の姿もありました。
1952年
トーベは依頼があった新聞社からの仕事を受けます。
有名で大きな新聞社からの依頼です。
すっかり人気ものになったトーベは、パリで開かれる展覧会に作品を出品する、芸術家仲間サムのためにパリに向かうことにします。
パリの展覧会で、後に運命の恋人となるトゥーリッキという女性と出会います。(誠実そうで感じが良い女性です)
トゥーリッキに街を案内され、入った店で偶然ヴィヴィカの姿を見つけるトーベ。
店からの帰り道、ヴィヴィカと2人で歩きながら話をするトーベでしたが、トーベの愛は深すぎました…。
ヴィヴィカにはトーベの深い愛は到底受け入れられないものだったようです。
最後の一夜を過ごし、トーベはヴィヴィカに別れを告げます。(彼女はトーベだけを愛してはくれない…一緒にいても傷付くだけです)
パリから戻り、亡くなった父親の遺品を片付けるトーベでしたが、そこで父親がトーベの記事を集めて作ったスクラップブックを、母親から手渡されます。(このシーンは涙が溢れました。父親はずっとトーベを見守って応援していたんですね)
そしてトーベのアトリエにはトゥーリッキが訪ねてきます。
トーベはトゥーリッキに1枚の油絵を見せ、タイトルを問うトゥーリッキにこう答えるのです…新たな旅立ちと…。
感想
私自身ムーミンが好きなので(誕生日に夫からムーミングッズをもらうこともあります)、ムーミンの作者である、トーベ・ヤンソンさんの自伝的映画ということで、興味を持ちました。
トーベはとても不器用な人間だと思います。
自由に生きようとして、でもとても傷つきやすくて、孤独を恐れ、そして苦しいほど愛を欲するけど臆病で寂しい。
私は1人の人間としてトーベのことが愛おしいと思いました。
アトリエに訪ねてきたアトスを誘って、夜嵐の中散歩に出かける所なんて、危ないけど私は好きな感性です。(そこまで大きな嵐では無さそうでしたが、実際は危険なので、嵐の中不用意に出歩くのはやめましょう)
私はトーベの心の中に灯る情熱の炎を見たような気がします。
そして臆病さの奥に隠れた優しさを、心の中に流れる豊かで澄んだ河のようなものを感じました。
穏やかに揺れる炎も時に激しく燃えさかり、静かで澄んだ豊かな河は時に大きく荒れ狂う…自分自身をも傷付けるように。
私が特に心に刺さったシーンがあります。
ヴィヴィカがムーミンを舞台化するため、舞台の練習をしていた時、ムーミン役の男性が役作りのために『なぜムーミンはいつも優しいのか?』と聞いた、上記のストーリーにも書いたあのシーンです。
このシーンは彼女の心が投影されていたのだと感じました
『優しさ』=『臆病さの裏返し』
そして私も同じだから(同じと言ってしまったら彼女に失礼になってしまうかもしれない…)『彼(ムーミン)は臆病なの…』痛いほどその言葉が胸に刺さりました。
ムーミンのキャラクター達にはモデルがいたようで、アトス=スナフキン
ヴィヴィカ=トフスラン(いつも一緒にいるキャラクターのビフスランはトーベ自身がモデルのようです)
トゥーリッキ=トゥーティッキ
だそうです。
映画では後に生涯を共にする、運命の恋人であるトゥーリッキとは出会う所までしか描かれていませんが、最後のシーンでトーベが、絵のタイトルを問うトゥーリッキに、タイトルの『新たな旅立ち』と答えるシーンは、後の2人の幸せな未来を予感させたのではないでしょうか。
みる人を選ぶ映画かもしれませんが、『優しさ』=『臆病さの裏返し』という言葉に共感された方、静かな余韻を残す映画がお好きな方、ムーミンの世界観が好きな方には刺さるかもしれません。
あと、アトスの『僕は鈍感になりきれない』という台詞も深く心に刺さりました。
彼の奥さんはアトスと結婚はしていても、恋愛に奔放な人でした。
そんな彼女の奔放さを認め、受け入れているように振る舞ってはいましたが、心の中では1人の人を大切にしたい(してほしい)と思っていたのだと思います。
だから鈍感になりきれないアトスは、奥さんと離婚して惹かれていたトーベに、プロポーズしたのではないかと思うのです。
トーベは彼を選ばなかったけど、アトスは本当に優しい人だと思いました。(私だったら選んでました、笑)